岸本研究員が令和3年度日本醸造協会技術賞を受賞しました

令和3年度日本醸造学会(令和3年10月1日~7日、オンライン大会)において、当研究所の品質・評価研究部門の岸本研究員が令和3年度日本醸造協会技術賞を受賞しました。

受賞対象

「ビールの香りを構成する香気成分群に関する研究」

受賞者

岸本 徹

業績紹介

受賞対象となった内容は、日本醸造協会誌(令和3年4月)の解説記事に掲載された内容である。

食品や飲料の香りに関する多くの研究においては、特徴への寄与度が高い成分(閾値以上の濃度で含有される成分)、またはその分析のし易さから高濃度で存在する香気成分に着目されて来た。しかしこれまでのビールの香りの研究においては、「これぞビールの香りの正体」という香気成分は見出されて来なかった。そこで著者はビール中に閾値以下濃度で含まれる香気成分群の寄与に着目した。

著者らは、匂い嗅ぎGC分析により検出した総計76香気成分について、あらゆる分析手法を駆使して正確に定量し(ppm~pptに及ぶ)、正確な濃度の76香気成分を組み合わせてビール香気の再構築試験を行ってきた。再構築液の完成度を評価することにより、それぞれの香気成分の寄与を考察した。

再構築試験の結果、①ほとんどの香気成分は単独でビールの特徴には寄与しておらず、76成分中わずか9成分のみが閾値以上の濃度で存在していること、②高濃度で含まれる少数の物質だけではビールの香りを全く説明できないこと、③閾値以上、以下の微量成分に至るまでの、多種の香気成分の複合的、相乗的な寄与がビールの香りの骨格を構成し、特に閾値以下濃度の香気の寄与が大切であること、を報告している。

大多数の「単独では特徴に寄与し得ない成分」の相乗的な寄与が、ビールの香りの構造とおいしさに寄与しているという著者の知見は、ビールのみならず、あらゆる食品の香味制御技術においても有用な知見となり得る。

(令和3年度日本醸造学会大会講演要旨集)

参考文献

  • 岸本徹, ビールの香りを支える閾値以下濃度の香気成分群, 日本醸造協会誌, 116(4), 198-203, 2021
  • 岸本徹, ビールの香り:その‘構造’を解き明かす ~76成分によるビール香気の再構築~, 化学と生物, 56(10), 659-664, 2018
  • Kishimoto et al., Simulation of Pilsner-type beer aroma using 76 odor-active compounds, Journal of Bioscience and Bioengineering. 126(3), 330-338, 2018
  • 掲載:2021年10月19日